「海温め装置」である原発の問題点

地球温暖化の問題を見るとき、小出裕章さん(元京都大学原子炉実験所)の言葉を思い出す。小出氏は、かつて教わった先生から、原発は「海温め装置」だと指摘する言葉を聴いたことを紹介している。原発は燃料の発熱量の3割程度しか電力に出来ないので、残り7割程度の熱量を海に(海外では川に)捨てている問題を指摘する。

昨年のヨーロッパの猛暑を報じた日本経済新聞(2019年7月26日)は記事の中で、川の水温を高めないために運転を一時停止したドイツのグローンデ原発の事実を報じている。

また、2018年8月3日のロイター通信WEB版は、海水温度上昇が原発運転の支障となり、原発の運転をとめた事例を報道している。

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日本経済新聞(2019年7月26日付から)引用

ドイツ北部ニーダーザクセン州当局は25日、同州のグローンデ原発の運転を26日に一時停止すると明らかにした。冷却水を排出する近くの川の水温を高めないための措置。国内の鉄道では熱波の影響で分岐器が故障し、列車の運行が乱れた。ドイツの一部では26日も高温が予想されている。

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[オスロ (2018年8月)1⽇ ロイター]

– この夏、記録的な猛暑に⾒舞われている北欧では、海⽔温の上昇によって、⼀部の原⼦⼒発電所が出⼒低下や⼀時稼動停⽌に追い込まれている。今後、他の原⼦⼒発電所でも同様の事態が発⽣する⾒込みだ。
今夏の気温は、これまでのところ季節平均を6─10度上回る⽔準で推移しており、地域の⽔⼒発電所の貯⽔量が激減して、電⼒価格が記録的な⽔準に上昇。欧州⼤陸からの電⼒輸⼊が増加する⼀⽅で、消費者が⽀払う電気料⾦も上昇している。
スウェーデンとフィンランドでは、原⼦⼒発電所はダム式⽔⼒発電に次ぐ第2の電⼒供給源で、計11.4ギガワットの出⼒がある。
原⼦炉は、冷却のために冷たい海⽔を利⽤しているが、気温が⾼くなりすぎると、安全操業に適さない温度にまで海⽔温が上昇することがある。その温度は、原⼦炉の種類や使⽤年数によって異なる。
スウェーデンやフィンランドの原⼦炉による予定外の出⼒低下で、電⼒価格がさらに押し上げられる可能性がある、とノルウェー⽔資源エネルギー庁のベガルド・ウィルムセン⽒は⾔う。
「熱波によって北欧諸国の原⼦炉が停⽌したり出⼒を減らせば、電⼒供給を下押しして、電気料⾦にも圧⼒がかかることになる」と同⽒は語る。
<なぜ海⽔温が問題なのか>
北欧の原⼦⼒発電所は、加圧⽔型原⼦炉(PWR)か沸騰⽔型原⼦炉(BWR)のいずれかを使っており、両タイプとも海⽔温が⾼いと影響を受けることがある。
⼀般的には、この地域にある12基の原⼦炉で海⽔温が⼀定の⽔準まで上昇すると出⼒が絞られ、さらに⾼い⽔準に到達すると停⽌する。
BWRは、より⻑く稼動することが可能で、出⼒低下からさらに⽔温が数度上昇するまで停⽌しない。
だがPWRは、出⼒低下からより短時間で停⽌する必要がある。
スウェーデンで原⼦炉7基を操業する国有電⼒会社バッテンフォールは今週、海⽔温が25度を上回ったことを受け、リングハルス原発にある4基の原⼦炉のうち、900メガワットのPWR1基を停⽌した。
同社のフォルスマルク原発には、BWR3基が設置されているが、バッテンフォールは7⽉初旬、周辺の海⽔温が23度を上回ったため、1基あたりの出⼒を30─40メガワット低下させた。
フィンランドの電⼒⼤⼿フォータムは先週、海⽔温が32度に達したため、ロビーサ原発の出⼒を低下させた。
海⽔温が原⼦炉の操業に与える影響の程度は、海⽔を取り込む深さによっても異なる。取⽔⼝が深い位置にある⽅が、海⽔温も低い。また、冷却⽔として使われた海⽔を海に戻すときの温度によっても左右される。もしそれが34度を上回れば、⼀部の原⼦炉では、安全基準上の理由から、⼤幅な出⼒低下や停⽌を余儀なくされる。
スウェーデン最⼤のオスカーシャム原発3号機(出⼒1・4ギガワット)の取⽔⼝は深い位置にあるため、猛暑への耐性は他の原⼦炉に⽐べて⾼いと、同原発を運営する独ユニパー(UN01.DE)傘下OKGの広報担当者は話した。
「海⽔の取り込み⼝は⽔深18メートルの位置にあり、海⽔温は⾃然に海⾯より低い。それでも海⽔温が⾼くなりすぎた場合は、それに応じて出⼒を低下させる」と、広報担当者は述べた。

オスカーシャム3号機は、海⽔温が25度を超えたら出⼒を低下させることになっているが、7⽉31⽇の時点では20度以下だった。
同様に、フィンランド産業電⼒(TVO)が操業するオルキルオト原発の取⽔⼝も深い位置にあり、海⽔温は上限の27度を下回っている。TVOでは、追加の安全対策として⾮常⽤の放⽔路を設けており、⼀定の条件化で使⽤済みの温まった冷却⽔をオルキルオト島の反対側に放⽔できるようになっているという。

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以上、ロイター通信から引用