伊方の危険を指摘(長沢啓行氏)

写真右端が長沢氏。原子力規制委に異議申立時

長沢啓行氏(大阪府立大学名誉教授)は、基準地震動計算に詳しい研究者である。長沢氏は、四国電力の基準地震動計算の欺瞞的なやり方を批判し、本来ならば、650ガルどころかはるかに大きな基準地震動にすべきである事を解き明かしている。

高松高裁で、同氏が参考人として示した資料(2018年6月5日)から、私なりに短く要点を紹介したい。(なお、この文章はご当人にもチェックいただいた。以下の掲載図は、高松高裁に長沢氏が提示した資料から)

◯震源を特定できる地震動の計算

①耐専スペクトルを用いる計算で、四国電力は最大で650ガルとした。長沢氏は、下図のように「69km」鉛直を用いると、900ガルとなり、さらに南傾斜だと930ガルになることを明らかにした。なお、耐専スペクトルは「平均像」によって計算しており最も危険な値を示していない。安全の側からみれば少なくとも基準地震動を2倍に見る必要があり、1800ガル程度となる。

②断層モデルを使った場合、四国電力は最大579ガルで650ガルを越えないとした。長沢氏は、地震調査研究推進本部の示したレシピを適切に使うならば、伊方3号機の破壊が始まるクリフエッジ=855ガルを越えてしまうと指摘した。

◯震源を特定せずに行う地震動計算

四国電力は「地表地震断層が出現しない可能性がある地震」として、北海道留萌支庁南部地震を選定した。そして、最大620ガルと計算している。長沢氏は、破壊開始点をアスペリティ下端中央に補正する必要があると指摘する。この補正を行った地域地盤環境研究所による震源近傍地震動評価では1,100ガルになり、原子力安全基盤機構JNESの計算を使えば1,340ガルになる。いずれも伊方原発の破壊が始まる855ガルを超えている。

◯松山地裁での四電側虚偽説明を指摘

さらに長沢氏は、2016年10月の松山地裁において、四国電力社員・松崎氏の虚偽説明を直ちに指摘した点について説明した。

その一つは、「破壊領域の幅」を震源断層の「幅」と見せかける虚偽説明をしたことだ。次の図は四国電力が示した資料に、赤・青の文字で長沢氏の指摘部分を書き加えている。

もう一つは、四国電力が「短周期レベルで見ると横ずれ断層型は地震による揺れに比べて有意に小さい」とする資料(次の図)しか裁判官に見せていない問題だ。

 

長沢氏は、他の電力では経験的グリーン関数法にもとづく評価を示している事実(下の図)を示した。マグニチュード7クラスの地震では有意に小さいと言えない重要な事実について、四国電力は隠蔽している。