伊方の危険を指摘(小松正幸氏)

小松正幸さん(愛媛大学名誉教授)は構造地質学の専門家である。中央構造線と活断層に詳しく、いま、伊方原発が中央構造線のダメージゾーン(断層破砕帯) の上にあるという重要な指摘をされている。9月に松山市で開催された 「原子力行政を問い直す宗教者の会2018」で報告された際の資料をいただいた。私なりに簡潔に紹介したい。(なお、この文章はご当人にもチェックいただいた。)

伊方沖の海底は半地溝

小松氏の9月の講演は、日本列島の地震はどこで、なぜ起こるのか/中央構造線とは何か/中央構造線と「中央構造線断層帯」は何が違うか/伊予灘はどのようにしてできたのか/ハーフグラーベンとは何か/中央構造線は活断層か/伊方原発はダメージゾーンの真上にある?―という構成だった。

小松氏は、伊方沖の海底のへこみを中央構造線を境界断層とする半地溝(ハーフグラーベン)とみなしている。2015年以降の研究の深まりから、国の地震調査研究推進本部もこれを認めるようになってきた。

そもそも、佐田岬半島の東端と西の九州側では活断層が佐田岬半島にへばりつく位置にあるのに、佐田岬半島の中央部だけ沖合に位置していることは不自然さがあった。佐田岬半島の中央部は四国電力の調査しかなく、しかも海岸近くの状態が不明のままだった。

この地域での、客観性のある調査が急がれており、小松氏らは2016年に海陸統合物理探査を原子力規制庁に要請した。小松氏は既存の資料を駆使して中央構造線を描いた。すると、佐田岬半島にへばりつく形で中央構造線の主断層が走っている可能性が出て来た。重力異常図でも重力異常の急変する場所が佐田岬半島の北部にへばりついていることもその根拠のひとつだ。 

断層破砕帯の上に原発が

伊予灘での半地溝の形成が終了したとする根拠は今のところない。原発のある位置は、半地溝を形成した境界断層である中央構造線の下盤にあたる断層破砕帯(ダメージゾーン)であることを強く示している。断層の下盤は隆起帯であるので佐田岬半島は隆起しながら強い破砕を受けている。「ダメージゾーン」の強度は、破壊されていない岩石より「50%〜60%低下する」とされている。原発の位置が、活動的な断層破砕帯の真上にあたることは深刻重大な問題である。