断層調査なしで伊方乾式認めようとする規制委

伊方原発施設内に乾式貯蔵施設設置を進めようとする四国電力の設置変更許可に対し、原子力規制委員会は6月に「審査書(案)」を示し、パブリックコメント(科学的・技術的意見募集)を行いました。7月24日を期限とされたこのパブコメの結果が間もなく公開されるはずです。
これについて、伊方等の原発をなくす愛媛県民連絡協議会の和田宰代表幹事は、7月24日にパブコメを提出しました。同日正午前にFAXで送信したほか、同日中にパブコメ用Webサイトからも送信しました。

200724伊方乾式パブコメ(和田FAX確定稿)

この中でも、とりわけ重要な点を2点指摘すると、一つは、審査書10ページ1行目からの問題です。広島高裁の決定でも明らかになった「震源断層が敷地に極めて近い」場合の基準地震動が全く検討されていない問題です。ところがこれを、全く検討しないまま、設置変更許可申請を妥当と結論づけようとしているのです。

<該当箇所>審査書(案)10頁 1行目

<内容>

意見:審査書(案)IV-1.1の末尾において、「地質境界断層としての中央構造線に係る地震調査委員会(2017)の記載を踏まえても、既許可申請の評価を見直す必要はないと判断される」とあるが、佐田岬半島北岸部に活断層が生じないとは断定できず、震源断層が原発敷地の直近にある可能性も否定できない。「評価を見直す必要はない」との判断は誤りである。

理由:地震調査研究推進本部の中央構造線断層帯長期評価(第二版)は伊予灘南縁、佐田岬半島沿岸の中央構造線について「現在までのところ探査がなされていないために活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる」としている。佐田岬半島北岸部に活断層が存在しないとは断定できず、中央構造線が震源断層である可能性を否定できないもとで、これが表層に達する位置と伊方原発の敷地の距離は2kmを下回ると見られる。「震源断層が敷地に極めて近い」のだから、設置許可基準規則解釈別記2の定めと地震ガイドの記述にある特別の規定による評価が必要であるが、この地震動評価は行われていない。基準地震動に変更はないとすることはできず、既設置申請の評価を見直す必要がないとは判断できない。

もう一つの重要な点は、審査書(案)34頁4行からです。

キャスクが壊れて放射性物質が漏れ出した場合の修復への対策が取られていない点です。

<該当箇所>審査書(案)34頁4行

<内容>

意見:審査書(案)IVの10の5-(2)において、「閉じ込め機能の異常に対しては、使用済み燃料ピットへの移送を行い」とあるが、「異常」を検知して「移送」することしか想定されておらず、キャスクから放射性物質の漏れが生じた場合に対応するものになっていない。「修復性が考慮されている」とは言えず、「適切に監視することができる」とは言えないのであり、規制委員会の判断は誤りである。

理由:強烈な地震動によって、キャスク足場の金具が破損しキャスク同士の衝突、あるいは頑強な壁面に激突することによって、キャスクの1次蓋、2次蓋から放射性物質が漏洩する可能性がないとは言えない。その場合、直ちに乾式貯蔵施設そのものを水中に閉じ込めるとともに水中から泡となって上昇する気体を大気中に放出しない仕組みが求められる。しかし、そのような仕組みは検討されておらず、設計方針は妥当とは言えない。

こうしたことから、和田宰氏のパブリックコメントは、審査書(案)の審査結果は、適当とは言えないと指摘しています。