「規制・安全」から遠ざかる原子力規制委員会

原子力規制委員会の姿勢には、いくつも疑問がある。

ごく最近では、乾式貯蔵施設について、規制委員会が建屋はいらないと主張して、四国電力とのズレが生じていることを7月28日付愛媛新聞が報じている。
※右は、愛媛新聞記事(2019/7/28付の一部)と、乾式貯蔵建屋(四国電力のパンフから)によるコラージュ。

建屋を乾式貯蔵の計画に組み込んでいる四国電力に対し、6月の審査会合で規制委員会は、建屋なしを方針としており「建屋がないと安全確保できないと誤った捉え方をされる」と難色を示しているというのだ。

そもそも、乾式貯蔵施設は原発の運転延長が狙い目であり、原発停止・廃炉を確実にするもとでなければ建設を許してはならない。それは、原発を動かし続けると、使用済み燃料プールが常に熱い使用済み燃料で満たされて、燃料溶融事故の危険を最大のまま高止まりさせるからだ。湿式貯蔵プールの強化など急がれる課題こそ優先すべきだ。

MOX燃料は300年以上プールで冷却の上でしか乾式貯蔵に移れない。巨大地震にも航空機の衝突にも、プールの水が抜けない対策が必要だが、この点は対策されていない。これらを放置して乾式貯蔵施設にのめり込んでいる点では、四国電力も原子力規制委員会も大差が無い。規制委員会は根本を誤っているうえに、愚かなこだわりまで示しているのが現状だ。

佐田岬半島の調査は放置し、特重施設審査は秘密で審査

さらに、元愛媛大学学長の小松正幸さんたちが、中央構造線活断層帯の本体が佐田岬半島にへばりつくように走っているのではないかと指摘し、とりわけ佐田岬半島中央部の海陸統合調査を求めている。しかし規制委員会は全くやろうとしていない。この点も理不尽の極みだ。

いま、伊方原発の特別重大事故等対処施設の審査も行われているが、その審査は公開されず秘密にされている。特重施設の完成遅れなら原発停止もあると規制委員会が明らかにしたが、この審査を客観的に検証することができないし、事故防止と事故対処に重要なプールの強化は抜け落ちている。

運転を止めて廃炉に向かわせ、廃炉に必要なものに限って特重施設も限定し、プール強化など急ぐものから進めるべきだ。

原子力規制委員会は、原発事故を絶対に繰り返さないための規制機関として、まともに役割を果たすべきだ。